戴帽式とは、基礎看護学などの座学・学内演習を終えた学生が、実際の病院で行う「臨地実習」へと進む前に執り行われる厳粛な式典です。一般的に看護学校や看護学部の1年次後期から2年次秋頃にかけて実施され、看護師としての自覚と責任、道徳的責任を胸に刻む節目として位置づけられてきました。
戴帽式の歴史は、近代看護の祖であるフローレンス・ナイチンゲールの功績に深く根ざしています。19世紀のクリミア戦争において、夜間もランプを手に傷病兵を見回った姿から「ランプの貴婦人」と称されたナイチンゲール。式典で行われるキャンドルサービス(親火からの採火)は、その博愛と奉仕の精神を象徴する「看護の灯火」を指導者から学生へと継承する大切なプロセスです。
また、戴帽式のハイライトとなるのが、全員で唱和する「ナイチンゲール誓詞」です。医師のヒポクラテスの誓いに倣って作られたこの誓詞には、医療人としての誠実さ、患者のプライバシー厳守、専門職業人としての研鑽など、極めて重い看護倫理のエッセンスが凝縮されています。薄暗い講堂に揺れる灯りと厳かな誓いの言葉は、学生たちが初めて「他者の命を背負う重み」を体感する瞬間でもあります。