現在、稲川会の主要行事や結縁式、義理掛け(冠婚葬祭などの儀礼)が執り行われる中核施設として知られるのが、神奈川県横浜市都筑区荏田東に位置する「稲川会館」です。住宅街と商業施設が混在するエリアに佇むこの大型施設は、高い塀と堅牢なセキュリティ設備に囲まれ、一般的な事務所とは一線を画す厳戒な警戒体制が敷かれています。
しかし、この稲川会館も決して平穏に運用されてきたわけではありません。会館の存在に対しては、地元自治会や住民ネットワーク、公益財団法人「神奈川県暴力追放運動推進センター」が中心となり、長年にわたって強い反対運動が展開されてきました。周辺の治安悪化や登下校時の児童・生徒への影響、さらには地価への悪影響を懸念する声は根強く存在します。
地域住民の主婦(50代)は、緊迫した現場の空気感を次のように証言します。
「代替わりや年始の挨拶回りの時期になると、周辺道路に数十台単位の送迎車や警察のパトカー、機動隊の大型車両が押し寄せ、物々しい怒号が響くこともありました。子どもを一人で歩かせるのは恐怖以外の何物でもなく、地域全体で『事務所を退去してほしい』という署名活動を続けてきました」
こうした住民運動の後押しを受け、警察当局と暴追センターは「暴力団事務所使用差止請求訴訟」や暴対法第15条に基づく使用制限命令の適用を厳格化。近年では、定例会などの大規模な集合が計画されるたびに先回りした警戒態勢が敷かれ、組織側も周辺住民との摩擦や法的強制措置を避けるため、会館の利用頻度を最小限に抑えざるを得ない状況に追い込まれています。