経営者としての顔だけでなく、思想家・教育者としても多大な影響を与えた稲盛氏の著作は、日本のみならず中国をはじめとする世界各国で爆発的なロングセラーを記録しています。
2004年に刊行された『生き方』は、「人間は何のために生きるのか」という根源的な問いに対し、「生まれたときよりも少しでも美しい心になって死んでいくこと、魂を磨くこと」と明快に答えを提示しました。働くことそのものが人間性を高める修行であるという労働観は、キャリアに悩む多くの世代に深い感銘を与えています。
そして晩年の集大成として執筆された『心』では、人生で起こるすべての事象は自らの心が引き寄せているという境地を語りました。利他の心を持ち、どんな逆境にも感謝の念を抱くこと。傲慢さを捨て、謙虚に生きることが、結果として事業の繁栄や人生の幸福へとつながるという一貫したメッセージは、混迷を深める現代社会において一層の説得力を持って響いています。