ファッション用語として定着した「地雷系」ですが、その発祥を辿るとまったく異なる文脈に行き着きます。地雷系の由来と語源は、2000年代後半から2010年代初頭のネット掲示板やSNSで使われていた「地雷女」という俗語です。「一見するとおとなしく可愛らしいが、付き合ってみると感情の起伏が激しく、束縛や依存が強烈で爆発する」という、交際相手としてのリスクを警告する男性目線のネガティブなラベルでした。
転機が訪れたのは2019年前後です。原宿を中心とする「病みかわいい」カルチャーの広がりや、自らの不安定さや孤独を隠さずアイデンティティとして発信するインフルエンサーの台頭により、言葉の主客が逆転しました。傷つきやすさや毒気をポジティブに肯定する自己演出スタイルとして再定義され、「地雷系ファッション」「地雷系メイク」という記号体系が急速に確立されていったのです。
さらに、このムーブメントを加速させたのが歌舞伎町トー横カルチャーの経緯です。新宿東宝ビルの周辺に集まった居場所を求める若者たちが、黒いオーバーサイズパーカーや厚底スニーカー、MCMのリュックといった共通のドレスコードを身に纏い、連帯感を確認し合いました。ストリートの過酷な現実とネット文化が融合した結果、単なるアパレルの流行にとどまらない、ユースカルチャーの象徴的アイコンへと変貌を遂げたのです。