宇宙衛星もドローンもなかった古代において、人類はどのようにして地球の全周を知り得たのでしょうか。世界で初めて地球の周囲長を科学的な幾何学計算によって算出した人物が、紀元前3世紀のエジプト・アレクサンドリアの学者エラトステネスです。
エラトステネスが用いた測量手法は、驚くほどシンプルかつ秀逸でした。
- 観測事実1:エジプト南部のシエネ(現アスワン)では、夏至の日の正午、深い井戸の底まで太陽の光が差し込み、垂直に立てた棒の影が消える(太陽が真上にある)。
- 観測事実2:同じ夏至の日の正午、シエネからほぼ真北に位置するアレクサンドリアでは、棒の影が約7.2度傾いていた。
- 幾何学的原理:太陽光線は地球に対して平行に降り注ぐため、「中心角の7.2度」は「円周全体(360度)の50分の1(360 ÷ 7.2 = 50)」に等しい。
- 導き出した結論:アレクサンドリアからシエネまでの距離(約5,000スタディア=約800〜900km)を50倍すれば、地球全周が求められる。
この計算によってエラトステネスが導き出した地球の全周長は、現代の単位に直すと約39,250km〜46,000km前後(古代の単位「スタディア」の換算基準による)。当時の技術水準を考慮すれば、現代の衛星測位データ(約40,000km)に対して誤差わずか数パーセントという驚嘆すべき精度でした。
日本においても、江戸時代後期の測量家・伊能忠敬が自らの足で日本全土を歩き尽くし、天体観測と歩測データを突き合わせることで「緯度1度の長さ=約28.2里(約111km)」を割り出しました。これを360倍して導き出された地球一周の距離は約39,960km。現代の測定値とほぼ完全に一致しており、当時の日本の天文学・測量学の高さを証明しています。
2026年現在の現代科学では、地球一周距離の測り方は超精密な宇宙測地技術へと進化しています。数十億光年彼方の銀河核から届く電波を受信する「VLBI(超長基線電波干渉法)」や、人工衛星にレーザー光を反射させる「SLR(衛星レーザー測距)」、GNSS衛星網の複合解析により、地球の形や大陸プレートの動きはミリ単位の精度でリアルタイム監視されています。