宇宙船もレーダーもなかった時代、人類は一体どのようにしてこの膨大な距離を測定したのでしょうか。その歴史は、古代ギリシャから始まる知恵と観測精度の戦いでした。
紀元前3世紀、古代ギリシャの天文学者アリスタルコスは「月がちょうど半月(上弦・下弦)に見えるとき、地球・月・太陽が直角三角形を形成する」という幾何学的配置に着目しました。肉眼観測の誤差から当時は「太陽は月の約20倍遠い(実際は約400倍)」という過小評価にとどまりましたが、三角測量を宇宙に適用する画期的な第一歩でした。
決定的なブレイクスルーをもたらしたのは、17世紀の望遠鏡の発明と「視差(パララックス)」の利用です。1672年、フランスの天文学者ジョヴァンニ・カッシーニとジャン・リシェは、パリと南米カイエンヌという遠く離れた2拠点から同時に火星を観測。地球の大きさを基線とした三角測量によって火星までの距離を割り出し、ケプラーの法則を掛け合わせて太陽までの距離を約1億4000万kmと算出しました。これは現代の正確な値に極めて近い驚異的な精度でした。
18〜19世紀には、金星が太陽面を通過する極めて稀な現象「金星の日面通過」を世界規模で同時観測する国際プロジェクトが展開されました。そして現代では、惑星へ直接電波を飛ばして反射時間を計るレーダー天文学や探査機の軌道追跡データにより、ミリ単位の精度で距離が把握されています。