衣装デザインの世界において、本作が残した功績は極めて大きい。名匠ジャクリーヌ・デュランは、実際のダイアナ元妃が愛用したスタイルを単に模倣するのではなく、彼女の感情の波を衣服の「色」と「シルエット」へと翻訳した。王室のしきたりによって細かく指定される「朝食の服」「夕食の服」というルール自体が、彼女にとっての制服であり精神的拷問であったことを衣装そのものが語っている。
生地のセレクトにも並々ならぬこだわりが貫かれた。硬質なウール素材と、肌に吸い付くような柔らかなシルクの対比。王家が求めるプロトコルに従う色彩と、本人が無意識に欲する原色の衝突。それらが画面の中で重なり合うことで、セリフ以上に雄弁な心理ドラマが組み立てられている。