景観の美しさだけでなく、その背景にある燈籠坂大師の切通し 歴史と由来を知ることで、現地での体験はより一層深いものになります。燈籠坂大師堂は、平安時代初期に弘法大師(空海)がこの地を訪れ、旅人の安全や無病息災を祈願して刻んだとされる石像を祀ったことが起源と伝えられています。背後にそびえる城山(造海城・百首城跡)の尾根に位置し、古くから地域住民の信仰を集めてきました。
かつては急峻な山道を登らなければ参拝できなかった難所でしたが、江戸時代に参拝客と住民の通行を容易にするため、最初の燈籠坂大師の手掘りトンネルが掘削されました。さらに時代が進んだ昭和初期(昭和初頭の土木事業)、より安全で荷車なども通しやすい参道へと改修するため、当時の地元住民や石工たちによって岩山を上部から垂直に掘り下げる「切通し(きりどおし)工事」が敢行されました。
壁面に近づいて観察すると、機械掘削のスムーズな面とは異なり、無数のノミ跡が規則正しい筋となって残されていることが確認できます。過酷な手作業で硬い岩を削り進めた当時の人々の熱意と労力が、現在の芸術的な陰影を生み出しているのです。