左目のアクシデントは、デヴィッド・ボウイという稀代の表現者にとって、結果的に最大の武器となりました。
1970年代初頭、ボウイは自ら創り上げた架空のロックスター『ジギー・スターダスト』として世界を席巻します。「火星からやってきたバイセクシャルの異星人」という特異なキャラクターにおいて、光によって色を変える左右非対称の双眸は、人間離れした神秘性と冷たい色気を完璧に演出しました。
ボウイ自身も後年、メディアのインタビューでこの瞳についてこう振り返っています。
「あの怪我のおかげで、僕の顔には一種の神秘的なオーラが宿った。ジョージには感謝しているくらいだよ」
本来であれば大きなハンディキャップとなるはずの身体的後遺症を、唯一無二のセルフプロデュース力で「異界の美学」へと転換させた点に、ボウイの天才性が如実に表れています。