重大事件の発生直後、警察組織が設置する捜査本部において、最も緊迫した空気が流れるのが「第一容疑者の絞り込み」の段階です。事件の鍵を握る第一容疑者とは一体誰なのか、そしてなぜその人物が特定されるに至ったのか。その真相の裏側には、緻密極まる初動捜査と証拠のパズル合わせが存在します。
第一容疑者として特定される理由の中で、最も強力な決め手となるのが「現場遺留物と科学鑑定の一致」です。指紋や掌紋だけでなく、現在では皮膚片から採取される微小なDNAや衣類の極小繊維(ファイバー鑑定)が、現場と被疑者を結びつける動かぬ証拠となります。さらに、スマートフォンやスマートウォッチに記録されたGPS位置情報、歩数計データ、通信ログなどのデジタルフォレンジック解析により、犯行時刻における行動履歴が分単位で可視化されます。
もう一つの決定打となるのが、第一容疑者のアリバイ崩しです。容疑者は追及を逃れるために「事件当時は自宅で寝ていた」「一人で遠方に出かけていた」といった第三者の証明がない主張を展開することが少なくありません。捜査員は周辺のNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)や交通系ICカードの履歴、コンビニエンスストアの防犯カメラ映像を何百時間分も精査する「リレー捜査」を行い、主張の矛盾を徹底的に突き崩していきます。物的証拠の包囲網が完成し、アリバイの虚偽が証明された瞬間に、捜査線上の人物は「疑わしい関係者」から「逮捕を前提とした第一容疑者」へと完全に切り替わるのです。