かつてGAINAXが制作を手掛け、社会現象を巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』。従来のSFアニメやロボットアニメが描いてきたヒーロー像や司令官像とは一線を画す存在として、碇ゲンドウは誕生した。巨大生命体「使徒」に対抗する国連直属の特務機関NERV(ネルフ)最高司令官。常に組んだ手で口元を隠し、冷徹な指示を下す姿は、視聴者に強烈な威圧感を与えた。
しかし、物語が深まるにつれ浮き彫りになるのは、不器用なまでに亡き妻・ユイへの愛に囚われた一人の男の素顔だ。人類補完計画という壮大な企みの裏に隠された個人的な願い。その複雑極まりない内面を、セリフの行間や息遣いだけで表現し切った表現力こそが、作品に類稀な奥行きを与えている。