物語の冒頭、第1話(原作コミックス第1巻)においてエドワード・エルリックがリオルの街でロゼに向かって語り聞かせる場面は、作品を象徴する名シーンの一つです。エドは神の奇跡を盲信する人々に対し、科学としての錬金術の視点から人間という存在を物質へと還元してみせました。
その際、エドが淀みなく口にした「大人1人を構成する物質リスト」は以下の通りです。
「水35L、炭素20kg、アンモニア4L、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他微量元素15種」
続けてエドは、「近代科学の調べじゃこれだけの成分が大人1人分のおよその構成物質だそうだ」「子供の小遣いでも市場で全部買えちゃうぜ。人間なんて安っぽくできてるもんだろ」と言い放ちます。この冷徹なまでの現実主義とシニカルな語り口は、かつて自らが母親を生き返らせようとして犯した禁忌の傷の深さを裏付けるものでした。