ディープインパクトの体調に異変が確認されたのは、2019年春の種付けシーズン中のことでした。3月中旬から首の痛みを訴えるようになり、馬体を最優先に考慮して同年の種付け業務を早期に終了。精密検査を重ねた結果、首の骨(頸椎)に狭窄が見られ、痛みを取り除いて今後の生活の質を維持するために、海外から専門の獣医師チームを招聘して手術を行う方針が固まりました。
手術は2019年7月28日に実施されました。頸椎を器具で固定・安定させる難度の高い外科手術でしたが、当日の処置は無事に終了。翌29日朝の段階では自力で立ち上がり、患部の経過も極めて順調と報告されていました。しかし、運命の歯車は29日夕刻から急速に狂い始めます。
29日の夜から歩行や立ち上がりに明らかなふらつきが見られ、深夜には自力で立ち上がることが困難な起立不能状態に陥りました。翌30日の早朝、緊急レントゲン検査を実施したところ、頸椎の骨折が判明。獣医学的に回復の見込みが全く立たない重篤な状態と判断され、午前5時45分、苦痛を長引かせないための安楽死処置が執行されました。