かつてはサブカルチャー特有のマニアックな記号と見なされていたこの造形は、今や世界のファッションシーンを席巻する一大トレンドへと変貌を遂げました。この横乳トレンドの真相には、ファッション界における「カッティングの再定義」があります。
海外の映画祭やアワードのレッドカーペットでは、脇下がウエスト近くまで深く切り込まれたプランジングサイドの横乳ドレスを纏うトップセレブが珍しくありません。正面を露出すると過剰にセクシーになりすぎるところを、首元をハイネックで完全に塞ぎ、サイドのみを大きく開けることで、モダンで知的なアヴァンギャルド性を演出できるからです。露出の「引き算」と「非対称性」が生み出す洗練されたモードスタイルとして受け入れられています。
一方、リアルクローズの領域で爆発的な流行の起点となったのが、かつてネット上で社会現象を巻き起こした「童貞を殺すセーター」の後継とも言える横乳ニットの多様化です。現在では露骨な穴あきデザインにとどまらず、アメリカンスリーブやサイドオープンベストなど、レイヤード(重ね着)を前提としたスタイリッシュな日常着としてストリートに浸透しています。身体のラインを隠すのではなく、健康的なシルエットとして見せる新しいボディポジティブの文脈とも結びつき、受容の裾野は急速に広がっています。