ドクターストップとは、医師が診察や検査の結果に基づき、患者の生命・健康を維持するために「就労や激しい運動、日常生活の特定行為を禁止または制限すべき」と判断・勧告することを指す通称です。医学的な見解であり、法律用語ではありません。
ここで多くの人が直面する疑問が、「ドクターストップに法的拘束力はあるのか」という点です。結論から言えば、主治医が出す診断書や口頭指示そのものに、企業を直接法的に縛る強制力はありません。
労働安全衛生法第68条には「病者の就業禁止」という規定が存在しますが、これは感染症や特定の重篤な疾患に関して事業者が就業を禁止する義務を定めたものであり、主治医の診断書が自動的に公的な業務停止命令になるわけではないのです。
しかし、だからといって会社がドクターストップを無視してよい理由には一切なりません。労働契約法第5条において、企業には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」という安全配慮義務が明確に課されています。
従業員から「医師より就業不可の診断を受けた」と申し出があったにもかかわらず、これを放置して働かせ、症状を悪化させた場合、会社側は安全配慮義務違反として多額の損害賠償請求や行政指導の対象となります。法的拘束力という直接の言葉はなくとも、実質的に企業は医師の診断を極めて重く受け止め、休職や業務軽減などの措置を講じる法的な義務を負っています。