物語の主人公は、横浜の洋菓子店でパティシエを目指して修行に励んでいた浅倉夏美(比嘉愛未)。実直で前向きな性格の夏美は、東京のリゾートホテルで働くエリートホテルマン・加賀美柾樹(内田朝陽)と出会い、やがて将来を誓い合う仲となります。 しかし、柾樹の実家は岩手県盛岡市で名高い創業数百年を誇る老舗旅館「加賀美屋」でした。加賀美屋が経営の危機に瀕していること、そして柾樹の兄が突然姿を消したことを知った夏美は、愛する柾樹を支えるため、自ら洋菓子の道を休止し、盛岡の加賀美屋へ単身乗り込んで若女将修行を始める決意を固めます。
伝統の厚い壁と「座敷童子」の導き
盛岡に降り立った夏美を待ち受けていたのは、想像を絶する伝統と格式の重圧でした。特に加賀美屋を束ねる大女将・加賀美カツ(宮本信子)は、伝統を重んじる厳格な人物であり、よそ者で旅館業務の経験もない夏美を簡単には受け入れません。仲居たちからの冷たい視線、礼儀作法や着物の着付け、客への細やかな気配りなど、覚えるべき課題は山積みでした。 夏美は失敗を繰り返しながらも、決して逃げ出さずに真正面から仕事と向き合います。劇中では岩手の民話に登場する「座敷童子(ざしきわらし)」の伝承が象徴的に描かれ、夏美の純真無垢な真心が、頑なだった従業員や常連客の心を少しずつ溶かしていきます。
加賀美屋の危機と近代化の波
物語中盤では、加賀美屋の買収を画策する外資系ファンドやリゾート開発業者との攻防、さらには仲居頭や親族との確執など、現実的な経営危機が次々と襲いかかります。柾樹が盛岡に戻り、近代的な経営手法を導入しようとする一方で、大女将のカツは「目に見えないおもてなしの心」を守り抜こうとします。 伝統と革新の板挟みになりながら、夏美は「加賀美屋にとって本当に大切なものは何か」を必死に模索します。単なる経営合理化ではなく、訪れる客一人ひとりの人生に寄り添う旅館であり続けるため、夏美は独自のアイデアと持ち前の明るさで新たな風を吹き込んでいきました。