本作の最大の引力は、「40歳のおじさんが本気で仮面ライダーになろうとしている」という滑稽とも思える導入から、読者の予想を根底から覆す本格ハードボイルド・バトルへと急転直下するプロット構成にあります。石森プロ・東映公認という看板を背負いながら、昭和特撮へのリスペクトと柴田ヨクサル作品特有の剥き出しの暴力・熱狂が見事に融合しています。
主人公の東島丹三郎は、ただのコスプレ愛好家ではありません。40年間にわたって愚直に肉体を鍛え上げ、熊をも素手で圧倒する規格外の基礎戦闘力を手に入れた求道者です。手作りの仮面ライダー1号マスクを被り「偽物」として始まった彼の戦いは、現代に復活した本物の悪の秘密結社「ショッカー」との遭遇によって、世界を股にかけた命懸けの聖戦へと昇華していきます。
ファンタジーに逃げるのではなく、「生身の人間が怪異に立ち向かう痛覚と恐怖」を極限までリアルに描写したことで、かつてヒーローに憧れたすべての大人の胸に深く突き刺さる傑作となりました。