インターネット上の掲示板やSNSでは、「藝大を中退した有名人」に対して「実技についていけなかったのではないか」「ドロップアウトしたのではないか」という穿った見方が散見されます。しかし、芸術・エンターテインメント業界の実情を知る関係者の間では、この解釈は根本的な誤解であると一蹴されます。
一般の総合大学における中退が学力不振や進路迷走を理由とするケースが多いのに対し、東京藝術大学における中退は、むしろ「学内で学ぶべき基礎技術を最短で吸収し尽くし、プロフェッショナルの現場へ引き抜かれた」というポジティブな理由によるものが圧倒的多数を占めます。
前述の常田大希のように、自らの創作活動のスピード感がアカデミズムのカリキュラムを追い越してしまった場合、大学という枠組みに4年間留まることは、クリエイターにとって決定的な機会損失になり得ます。また、在学中から外部のコンペティションや商業プロジェクトで頭角を現し、著名プロデューサーやレコード会社から即戦力としてスカウトされる事例も後を絶ちません。
藝大の教授陣自身も、才能ある学生が学外の激流へ漕ぎ出すことを無下には引き止めない不文律があります。「学校は技術を盗む場所であり、表現者は社会の中で磨かれるべき」という共通認識が学内に浸透しているからこそ、中退者であっても堂々と「藝大出身」として業界内で敬意を払われ、卒業生と同等、あるいはそれ以上の影響力を発揮し続けるのです。