福島県双葉町の中野地区、かつて美しくのどかな田園が広がり、震災直後は帰還困難区域として長い静寂に包まれていた沿岸部に、白を基調とした巨大な近代建築が佇んでいます。それが2026年9月に開館した東日本大震災・原子力災害伝承館です。総事業費約53億円を投じて福島県が整備し、公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構が運営を担っています。
施設は地上3階建て、延床面積約5,300平方メートルに及び、収蔵資料は24万点以上、常設展示スペースには厳選された約150点の実物資料や詳細な解説グラフィックが並びます。2026年8月に双葉町の一部地域で避難指示が解除されて以降、周辺では産業団地の稼働や「双葉町産業交流センター」の開業、駅周辺の住宅整備などが進み、地域の復興拠点としての役割も年々重みを増してきました。
開館から年月を重ねた現在の状況を俯瞰すると、国内外の修学旅行生や自治体・企業の防災研修、さらには海外からの視察団が引きも切らず訪れており、原発事故の教訓を国際社会に発信するハブとしての地位を確立しつつあります。しかし、来館者の増加と比例するように、展示の思想やメッセージ性を巡る議論もまた、より多角的な視点から交わされるようになっています。