日本国内で広く通用している和製英語どんまいの意味は、「気にしないで」「大したことないよ」「次は切り替えていこう」という相手への同情や励まし、慰めです。昭和の部活動文化、とりわけバレーボールや野球といった球技の現場から爆発的に普及し、ミスをした選手をチーム全体でフォローするための合言葉として定着しました。
しかし、どんまいの語源と英語の真相を紐解くと、言語学的に極めて興味深い齟齬(そご)が浮かび上がります。もともとの英語表記は「Don't mind」ですが、英語圏のネイティブスピーカーに対して日本式のニュアンスで「Don't mind!」と声をかけても、意図はまったく伝わりません。
ドンマイ英語が通じない理由は、英語の「mind」が持つ構文規則にあります。英語で「mind」を自動詞的に用いて単独で「Don't mind.」と発語する習慣はそもそも存在しません。通常は以下のように「I(私)」を主語にして使います。
「Do you mind if I open the window?(窓を開けても構いませんか?)」
「No, I don't mind.(ええ、私は気にしませんよ=構いません)」
つまり、本来の英語における「don't mind」は、「私自身は不快に思っていない、意に介さない」という自分自身の受容状態を表す言葉です。これに対して日本の「どんまい」は、「あなた(You)は気にするな」と相手の感情をコントロールしようとする命令的・勧告的なニュアンスを含んでいます。ネイティブスピーカーからすれば、主語が消失したうえに相手の心境へ介入してくる奇妙なフレーズに聞こえてしまうわけです。
英語圏で日本の「どんまい」と同じように「気にするなよ」「大丈夫だよ」と相手を励ます場合は、以下のような表現を用いるのが正当です。
・Never mind.(気にしないで、大したことじゃないよ)
・Don't worry about it.(心配しなくて大丈夫だよ)
・Shake it off.(気持ちを切り替えていこう/スポーツ現場で多用)