かつて霊的な怪異とされていた現象は、現代の脳科学や臨床心理学によって「自己像幻視(オートスコピー:Autoscopy)」と呼ばれる認知障害・神経症状として説明されています。
人間が「自分は自分の肉体の中にいる」と感じる自己位置感覚は、脳の側頭頭頂接合部(TPJ)と呼ばれる領域で処理されています。この部位は、視覚、前庭感覚(平衡感覚)、体性感覚(触覚や関節の位置感覚)を統合する極めて重要な司令塔です。
過度なストレス、睡眠剥奪、あるいは脳梗塞やてんかん発作によって側頭頭頂接合部に一時的な情報処理エラーが生じると、脳は「自分の身体の位置」と「視点」を一致させることができなくなります。その結果、自分の身体が前方に立っているように知覚してしまうのです。
「会うと死ぬ」と言われた真の理由はここにあります。つまり、霊的な呪いではなく、脳腫瘍、脳血管障害、重篤な心身の衰弱といった生命の危機に関わる病変が引き金となって幻視が生じていたため、目撃直後に急死するケースが後を絶たなかったと考えられます。