アニメ『ドラえもん』を語る上で欠かせないのが、大山のぶ代が命を吹き込んだ26年間の昭和・平成初期シリーズと、2005年以降の水田わさびによる新シリーズの変遷です。両期にはそれぞれ独自の演出美学が存在します。
大山時代の神回は、渡辺歩監督や芝山努監督が手掛けた中編映画(『帰ってきたドラえもん』『おばあちゃんのおもいで』など)に見られるように、どこかノスタルジックな昭和の空気感と、間の取り方を重視した情緒的演出が特徴です。セル画の柔らかな質感と、大山が演じる包容力に満ちたドラえもんの声は、「母親のような慈愛」を視聴者に感じさせました。
一方、水田わさび体制となって20年以上が経過した現在、新シリーズは原作回帰を掲げつつ、ハイクオリティな作画とテンポの良い現代的な心理描写で新たなファン層を獲得しています。「走れドラえもん!銀河グランプリ」や「ぞうとおじさん」のリメイク版などでは、のび太とドラえもんの「対等な相棒関係」が鮮やかに描写されています。新旧の表現アプローチは異なれど、根底にある「弱者への温かな眼差し」という哲学は完全に継承されています。