よしながふみによる漫画『大奥』の実写化において、最大のハードルとなったのが「男女逆転」という奇想天外な世界観の構築だ。男子の人口が激減した結果、女性が社会の重責を担い、将軍職をも継承していく異色のパラレルワールド。一歩間違えれば荒唐無稽に見えかねない設定を、本物の歴史ドラマへと昇華させたのは役者陣の凄みだった。
なかでも三代将軍・徳川家光を演じた冨永愛の佇まいは、語り草となっている。圧倒的なスタイルと凛とした眼光で威風堂々と江戸城に君臨する一方、胸の奥底に抱える深い孤独と傷を見事に表現。男装の麗人としての説得力はもちろん、権力者としての苦悩を全身で絞り出す演技は、視聴者の心を激しく揺さぶった。