ネット上のグルメ情報やSNSの投稿では、どて焼きに関して事実と異なる誤解が散見されます。特に多い誤認が「どて焼きは関西風のもつ煮込みである」「煮ているのになぜ焼きと呼ぶのか意味不明」という2点です。
まず、どて焼きは「もつ煮(内臓料理)」ではありません。もつ煮に使用されるのは豚や牛の小腸・大腸・胃袋などの消化器官ですが、どて焼きの主役はあくまで牛すじ肉(運動器系組織)です。内臓肉特有の独特な強い匂いがなく、煮込むことでコラーゲン質がゼラチン化し、ねっとりとした上質な旨味へと変化します。ホルモン(内臓)特有のクセが苦手な人でも、どて焼きなら抵抗なく美味しく食べられるのはこの部位の違いによるものです。
また、「現在の店舗では味噌の土手を作っていないのだから、実質的にはどて煮ではないか」という疑問も寄せられます。確かに現代の飲食設備では、平鍋の縁に味噌を盛るクラシックな手法をとる店は減少し、調合した味噌ダレを最初から鍋に張って煮込むスタイルが一般的です。しかし、名店の厨房では今でも、平鍋の縁で焦げつかないよう絶妙な火加減で水分を飛ばし、具材にタレを照り焼きのように絡めつける技法が踏襲されています。「煮てから焼き絡める」というニュアンスは、現代の調理工程の中にも息づいているのです。