マリア館の外観は一見、瀟洒なプチホテルのようだ。アーチ状の窓、赤レンガのアクセント、中庭の緑。だが、この洗練された佇まいこそが、傷つき追い詰められた女性たちの心を解きほぐす最初の砦になっている。無機質なコンクリートの病院では、彼女たちは萎縮してしまう。誰の視線も気にせず、ただの「一人の女性」として迎え入れられること。その配慮が、建物の隅々にまで宿っている。
病棟内にはプライバシーを極限まで保つ動線が張り巡らされている。一般の出産で入院している母親たちと顔を合わせることなく診察を受け、部屋へ入るための静かな配慮。誰がどのような事情でここにいるのか、他の入院患者には一切わからない。徹底した秘匿性があるからこそ、遠方から夜行バスやヒッチハイクで身一つで逃げてきた女性が、この場所で初めて深い息を吐き出すことができる。