西東京という土地の特異性は、かつて都心のビジネス街を最前線で支えてきた企業戦士たちが、退職後に圧倒的な人口密度で留まっている点にある。彼らが持つ知見やスキルは、地域にとって途方もない埋蔵資源だった。
「生涯現役」という手垢のついたスローガンは、ここではもっと泥臭く、実利的な意味を持つ。農地が点在する西東京の特長を活かし、規格外野菜の加工・流通ルートを元商社マンの高齢者がロジスティクスを組み直して再構築する。元経理担当の女性が、若手フリーランスや個人商店の確定申告を伴走サポートする。福祉の予算にぶら下がるのではなく、自分たちの手で地域に新しいキャッシュフローを生み出す。年金という土台があるからこそ、無理な利益至上主義に走らず、持続可能なローカル経済を構築できるという逆転の発想がここにはある。