行司が取組中に発する独特の掛け声には、数百年にわたり受け継がれてきた神道由来の言霊と深い意味が込められています。
力士が立ち合う瞬間に放たれる「はっけよい」の語源には主に2つの有力説が存在します。一つは「発気用意(気力を奮い立たせて準備せよ)」という気合を促す合図、もう一つは易学の「当たるも八卦、当たらぬも八卦」に通じる「八卦良い(万事順調で天地の気が整った)」という祝福の言霊です。
続いて連呼される「のこった、のこった!」は、現代語の「残った(土俵内にまだ踏みとどまっているぞ)」を意味します。「両者ともに技を尽くして全力を出し切れ、まだ勝負は決していない」と力士を鼓舞し続ける実況伝達の役割を果たしているのです。
また、行司が手に持つ「軍配(ぐんばい)」は、戦国武将が合戦の指揮棒として用いた軍配団扇が起源です。土俵を宇宙・戦場と見立て、どちらの武威が勝ったかを神仏と観客に向けて明確に示す神聖な神器として扱われています。