彼女のビジュアルや演技の幅において、ひとつの大きな転換点となった作品として映画『ピース オブ ケイク』があげられる。田口トモロヲ監督が描くこのロマンティック・コメディで、多部未華子は恋に不器用で等身大の主人公・志乃を情熱的に演じた。共演した綾野剛とのリアルでどこか切ない掛け合いは、多くの観客の心に深く刻まれている。
この作品で見せた、感情を全身で表現する少女と大人の狭間の表情。それは、従来の優等生的なイメージを打ち破り、大人の女性としてのエモーショナルな艶っぽさを開花させる一歩となった。実力派俳優である綾野剛との濃厚な芝居のやり取りを経て、表現者としての深みが一気に増したことは間違いない。