ネット社会や一部の心無い親族の間で今なお根強く囁かれているのが、「落ち着きがないのは親の甘やかしのせい」「スマホや動画の見せすぎで自閉症になる」といった根拠のない俗説です。断言しますが、これらは科学的・医学的に完全に否定された誤謬です。
自閉スペクトラム症もADHDも、遺伝的素因や胎生期の神経発達の差異に起因する先天的な脳機能の多様性(ニューロダイバーシティ)であり、親の愛情不足や育児環境が直接の原因ではありません。むしろ、「厳しく叱れば直る」という昭和的なスパルタ教育を強要することこそが、子どもの自己肯定感を根底から破壊し、学童期以降の不登校、うつ病、強迫性障害、自傷行為といった深刻な二次障害を誘発する最大のリスク要因となります。
もう一つの重大な盲点が、大人の発達障害における多動と自閉傾向の見落としです。子どもの頃に「少し落ち着きのない風変わりな子」で見過ごされ、社会人になってマルチタスクの破綻や職場の人間関係での摩擦を機に初めて受診し、30代・40代で併発が判明するケースが近年急増しています。大人になってからの多動は、肉体的な駆け回りではなく「頭の中の多動(常に思考が暴走して不眠になる)」「衝動買い」「頻繁な転職」として現れやすいため、より一層周囲の理解と専門的なアプローチが求められます。