多発性骨髄腫の最大の恐ろしさは、「初期段階では特異的な自覚症状に乏しく、日常的な不調と混同されやすい」点にあります。闘病を公表した著名人たちの多くも、最初は病名を疑うことすらありませんでした。
医療現場において、多発性骨髄腫の代表的な兆候は英語の頭文字を取って「CRAB(クラブ)徴候」と呼ばれています。
- C(Calcium / 高カルシウム血症):骨が溶け出して血液中のカルシウム濃度が上昇。強い口の渇き、吐き気、意識の混濁などが生じる。
- R(Renal / 腎機能障害):骨髄腫細胞が作る異常なタンパク質(Mタンパク)が腎臓に詰まり、むくみや尿の泡立ち、倦怠感を引き起こす。
- A(Anemia / 貧血):骨髄ががん細胞に占拠されて赤血球が作れなくなり、動悸、息切れ、全身の重怠さが続く。
- B(Bone / 骨病変):骨がスカスカにもろくなり、背骨や肋骨の圧迫骨折、激しい腰痛や背部痛が発生する。
佐野史郎さんの場合は腎機能の異常値、宮川花子さんの場合は激しい腰痛と下半身の違和感が契機となりました。「湿布を貼っても治らない腰痛が数週間続く」「階段を上るだけで異常な息切れがする」といった症状は、決して単なる加齢や筋肉疲労で片付けてはならない重要なサインです。