『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』において、サキュバスが登場するのは悪魔城の「地下墓地」奥に存在するナイトメア(悪夢)の空間です。セーブポイントを模した怪しげな棺に入ると突如として空間が歪み、プレイヤーはアルカードのトラウマである「母リサの処刑シーン」へと強制的に引きずり込まれます。
処刑台に磔にされたリサは、駆け寄る息子アルカードに対し「人間を憎みなさい」「父上の復讐を果たして」と、生前の彼女からはあり得ない復讐の言葉を投げかけます。しかし、アルカードは母が遺した真実の言葉――「人間を恨んではいけない。彼らも弱い存在なのだから」という遺言を胸に刻み続けていました。偽りの母のセリフの矛盾を冷徹に見破った瞬間、リサの肉体は引き裂かれ、妖艶な本性を現したサキュバスが姿を現します。
この一連のイベントにおけるサキュバスのセリフや名言は、アルカードの内面を浮き彫りにする名やり取りとして名高いものです。
「ふふふ……よく見破ったわね。人間の女など、いくらでも化けられるわ!」
「お前の命、いただくよ……!」
アルカードがドラキュラと人間の間に生まれた自らの宿命と対峙し、精神的な弱克を乗り越える契機となるこのイベントは、単なるボス戦を超えた物語上の重要なハイライトとして絶賛されました。
母リサとサキュバスの二面性を演じ切った名優・深見梨加氏の怪演
このトラウマイベントを語る上で欠かせないのが、担当声優・深見梨加氏による圧巻の演技力です。深見氏は『美少女戦士セーラームーン』のセーラーヴィーナス(愛野美奈子)役や、ハリウッド映画の吹き替え(アンジェリーナ・ジョリー、ジュリア・ロバーツなど)で知られる実力派声優です。
本作において深見氏は、慈愛に満ちた母「リサ」と、邪悪で妖艶な「サキュバス」の一人二役を兼任しています。処刑台でアルカードを惑わす際の甘美でどこか不穏な声色から、正体を暴かれた瞬間の冷酷かつ下品な嘲笑への急変は、プレイヤーの聴覚に強烈な違和感と恐怖を植え付けました。キャストの兼任というゲームの仕様そのものを「悪魔の化けの皮」という物語の演出へ昇華させた見事なキャスティングといえます。