20代後半から30代にかけて、温水の頭髪は急速に後退し始める。二枚目俳優を目指していたわけではないにせよ、若い役者にとって容姿の変化は死活問題だ。多くの者が隠そうとする中、温水は違った。彼はそれを「隠さない」どころか、むしろキャラクターとして前面に押し出す決断を下す。
この割り切りが、彼の運命を劇的に変えた。哀愁、気弱さ、あるいはどこか憎めない小市民らしさ。髪の毛の薄さは、彼にしか出せない唯一無二の「味」へと昇華された。コンプレックスを最強の武器に転換したこの戦略は、現代のセルフプロデュースの先駆けとも言えるだろう。