言葉のルーツを紐解くと、この表現の圧倒的な臨場感に気付かされる。「喉から手が出る」とは、喉から手が出てしまうのではないかと錯覚するほど、欲望が切実で耐えがたい状態を指す慣用句だ。江戸時代の俗語や落語の文脈でも重宝されてきた表現であり、食物に飢えて喉が渇くような極限状態が転じて、物理的な物品や地位、情報に対する烈烈な渇望を表すようになった。
日本語には「喉喉(のどのど)」「喉が鳴る」といった食欲や欲求に関連する表現が数多く存在するが、「手が出る」という物理的なアクションを結合させた点に、この言葉の卓越した比喩センスがある。内面にある抽象的な「欲しい」という感情が、体外へと突き出そうとする不可逆な物理運動として描写されるのだ。だからこそ、どれほどテクノロジーが進化した時代であっても、人間の原初的な渇望を語る上でこれ以上の言葉は見当たらない。