インターネット上の掲示板やSNSでは、「最初は痛くても使い続ければ耳の形がイヤホンに馴染む」といった誤った言説が散見されます。しかし、成人の耳介軟骨や外耳道構造がイヤホンの圧力によって都合よく変形することは医学的にあり得ません。
「痛みに慣れた」と感じるのは、単に圧迫部位の末梢神経が麻痺して感覚が鈍麻したか、皮膚の角質が異常に肥厚して防御反応を起こしている状態です。この段階を放置すると、慢性的な組織壊死や難治性の軟骨膜炎へ移行し、外科的切開が必要になるケースすら存在します。
また、耳垢塞栓の予防や衛生管理のつもりで「アルコール濃度の高い除菌シートでイヤホンや耳内を頻繁に拭く」という行為も逆効果です。アルコールは耳の皮膚のバリア機能を果たす皮脂膜を破壊し、外耳道の乾燥・亀裂を引き起こして細菌感染を助長します。日常のケアは乾いた清潔な布や綿棒でイヤホンの油分を優しく拭き取る程度にとどめるのが正解です。