ドラマの底流に流れる凄まじいリアリズムは、実在のモデル・小篠綾子の波乱の生涯と、綿密な取材を重ねた脚本家・渡辺あやの筆力によるものだ。男尊女卑の風潮が色濃く残る戦前・戦中において、ミシン一台で洋裁店を立ち上げ、女手一つで三姉妹を世界的デザイナーへと育て上げた小篠綾子の実話は、ドラマ以上に劇的だったとも言われる。
渡辺あやは、彼女の成功譚を単なるサクセスストーリーとして美化しなかった。商売への執着、職人との衝突、母としての挫折、そして道ならぬ恋に落ちる弱さまで、人間・小篠綾子の本質を容赦なく脚本に落とし込んだ。
「岸和田のことば」の持つ独特のリズムと泥臭さを活かした台詞回しは、演じる役者たちの肉体を借りて生きた言葉となった。徹底した生活感の描写があったからこそ、私たちは劇中の糸子の涙と歓喜に、我が事のように胸を震わせたのだ。