本作最大の特徴は、架空のファンタジーではなく実在する公立高校サッカー部の快挙をベースにしたドキュメンタリー的側面を持っている点です。物語の舞台となる「新生高校」のモデルは、埼玉県立浦和南高等学校(浦和南高校)です。
1969年(昭和44年)、開校わずか7年目だった浦和南高校サッカー部は、インターハイ(高校総体)、国体、そして全国高校サッカー選手権大会のすべてを制覇する史上初の「高校三冠」という不滅の偉業を達成しました。当時の報道各社やサッカー関係者の記録によると、まだ日本国内でサッカーがマイナースポーツだった時代に、泥まみれになりながらパスを繋ぎゴールを奪う彼らの姿は社会現象となりました。
作中に登場する主要キャラクターたちにも、それぞれ明確な実在モデルが存在します。
鬼コーチとして主人公たちを徹底的に鍛え上げる松木天平のモデルは、浦和南高校を率いて一時代を築いた名将・松本暁司監督です。松本監督は埼玉師範学校(現・埼玉大学)出身で日本代表GKも務めた伝説的指導者であり、劇中で見せる妥協なき指導哲学は実際の現場そのものでした。そして、破天荒な才能を持つ主人公・玉井真吾のモデルとなったのが、後に日本代表のエースストライカーとして国際Aマッチで活躍し、Jリーグでも指導者を務めた永井良和氏です。
自著や当時の回顧インタビューにおいて関係者が「練習環境はお世辞にも恵まれていなかったが、ボール一つに命を懸けていた」と振り返る通り、昭和の熱気とリアリズムが物語の根幹に息づいています。