ポケベルの軌跡を紐解くと、技術革新に伴う劇的なユーザー層のシフトが見えてきます。
草創期の1970年代から1980年代前半、ポケベルは「ビジネスマングッズ」の代表格でした。当時の端末には画面がなく、呼び出し音が「ピピピ」と鳴るだけの仕様です。外出中の営業社員が呼び出し音を聞くと、最寄りの公衆電話を探して会社に折り返し電話を入れる、という使い方が徹底されていました。
転換点が訪れたのは1987年のことです。液晶画面に数字が表示できる機種が登場し、電話番号や簡単な数字コードを直接送信できるようになりました。この機能に目をつけたのが、トレンドに敏感な当時の女子高生をはじめとする若者たちです。
1990年代前半、ポケベルは若者カルチャーの中心へと躍り出ます。最盛期となった1996年には全国の契約数が1,000万件を突破。休み時間の学校や放課後の駅前では、公衆電話の前に長い行列ができる光景が日常茶飯事となりました。小銭やテレホンカードを握りしめ、限られた時間でいかに素早くメッセージを打ち込めるかを競い合った経験は、いわゆる「ポケベル世代」にとって忘れがたい原風景となっています。