なぜ他の炒め物と違い、生姜焼きでは玉ねぎの切り方にこだわる必要があるのだろうか。
その最大の理由は、豚肉と玉ねぎの「火が通るスピードの違い」にある。豚肉、特に薄切り肉はフライパンに投入してからわずか1〜2分で火が通る。しかし、玉ねぎの辛味成分であるアリルプロピルジスルフィドが熱によって甘み成分へと変化するには、一定の加熱時間が必要だ。
肉がパサつかない短時間調理の中で、玉ねぎの甘みを最大限に引き出すためには、熱伝導率を高める包丁の入れ方が不可欠になる。包丁の刃をわずかに斜めに入れる「削ぎ切り風」のスライスや、根元を残して薄く切り込みを入れる工夫が、短時間での火の通りと味の染み込みを劇的に促進させる。