蕎麦屋で供される「そば湯」は、単なる口直しのお湯ではありません。蕎麦を茹でる過程で麺から溶け出した極めて貴重な栄養素を含有する「機能性スープ」そのものです。
蕎麦に含まれるビタミンB1やB2、カリウム、そしてルチンの一部は水溶性あるいは熱水抽出されやすい性質を持っています。麺を茹でる段階で、これら微量栄養素の約30%〜50%が茹で汁中に移行してしまいます。つまり、麺だけを食べてそば湯を残す行為は、蕎麦が持つ栄養価の半分近くを廃棄しているのと同等です。
特にルチンは熱水に溶け出す性質があるため、白濁したそば湯の中に高濃度で分散しています。食後に温かいそば湯を飲むことで、胃腸を温めて消化酵素の働きを助けつつ、溶出栄養素を余すことなく体内へ回収できます。
ただし、健康効果を引き出すためには飲み方に注意が必要です。残ったそばつゆを全量そば湯で割って飲み干すと、過剰な塩分(食塩相当量2〜3g以上)を摂取することになります。そば湯を飲む際は、つゆを少量だけ加えるか、そば湯単体で香りと甘みを味わうスタイルが推奨されます。