倍賞千恵子によるソフィーの造形は、声優演技の歴史において今なお最高峰の金字塔として語り継がれている。18歳の控えめで自信のない少女時代から、荒地の魔女の呪いで腰の曲がった老婆へと変貌し、物語が進むにつれて内面の変化に応じて声のトーンが刻一刻と変化していく。
単に声を低くして老婆を真似るような安易な技術ではない。倍賞が表現したのは、年齢という肉体の檻から解放され、むしろ図太く前向きになっていく人間の「生」そのものの躍動だった。ハウルを叱咤激励し、城を掃除し、運命を切り拓いていく声の力強さ。
恋をすることで少女の顔に戻り、不安に苛まれると再び老いていくソフィーの揺らぎを、倍賞は神がかり的な声のグラデーションで演じ分けた。宮崎監督が「ソフィーが倍賞さんで本当によかった」と深く感謝を述べたのも必然だったと言える。