北村有起哉を語る上で避けて通れないのが、父である名優・北村和夫(2007年逝去)の存在です。昭和の演劇界・映画界に燦然と輝く巨星を父に持ったことは、若き日の彼にとって計り知れないプレッシャーでした。
デビュー当初は「北村和夫の息子」という色眼鏡で見られることを極度に嫌い、親の七光りに頼らない姿勢を貫くため、文学座への正規入団ではなく外部の舞台オーディションに挑戦し続ける道を選びます。父親との間には演劇論を巡る激しい衝突やすれ違いの時期もありました。
しかし、舞台経験を重ねるにつれ、父が背負ってきた演劇の重みや凄みを肌で理解するようになります。父の晩年には同じ舞台に立ち、役者同士として魂を交歓させました。父の背中を追うのではなく、自らの足で泥をかき分けて歩んできたからこそ、現在の揺るぎない演技の深みが生まれています。