世間一般において「木村拓哉の代名詞」のように扱われている「ちょ、待てよ!」ですが、実際のドラマ本編でこのフレーズが決め台詞として多用された記録はありません。発端となったのは、1997年放送のフジテレビ系月9ドラマ『ラブジェネレーション』です。主演の片桐哲平(木村拓哉)が、ヒロインの上杉理子(松たか子)を追いかける第5話のワンシーンで発した自然なリアクションのワンフレーズが、本来の原点でした。
このセリフに目をつけたのが、ものまねタレントのホリでした。2000年代初頭、木村拓哉の日常的な仕草や声のトーンをデフォルメし、「ちょ、待てよ!」を決めフレーズとしてネタ番組で披露したことで、お茶の間に爆発的な浸透を見せます。さらに2001年の『HERO』でも久利生公平が走り去る同僚を呼び止める際、似たニュアンスの言葉を発したことが重なり、「キムタク=ちょ待てよと言う」という記号化されたパブリックイメージが完成しました。
かつて木村拓哉本人がバラエティ特番のトークで「そんなに連呼した覚えはない」と苦笑交じりに語った場面が話題を呼びましたが、本人の口癖として自然に出ていた言葉はむしろ「ぶっちゃけ」などのくだけた日常語でした。パロディによって固定化されたパブリックイメージを剥ぎ取った先にこそ、彼が表現者として紡ぎ出してきた本質的な言葉の強さが存在します。