ひと昔前の「メシマズ」といえば、奇抜な創作料理や不可解な食材の組み合わせが笑いの種とされることが多かった。しかし2026年現在の傾向は、より切実で複雑だ。SNSや匿名カウンセリングに寄せられる相談の多くは、「盛り付けはSNS映えするのに味が薄すぎる」「健康のために無塩・無油を徹底され食欲がわかない」「市販の調味料を頑なに拒否するが下処理が不十分」といった、日常の延長線上にあるズレである。
共働き世帯が圧倒的多数を占める中、料理を担う側の時間的・精神的余裕も限界に達している。「限られた時間で作っているのだから文句を言わないでほしい」という作る側の正論と、「口に合わないものを無理して食べる苦痛」に耐える食べる側の疲弊。双方の言い分が平行線をたどった結果、本来癒やしの場であるはずの食卓が、緊張感漂う「試練の場」へと化してしまう。