「十割は、素材の命をそのままいただく真剣勝負です」と語るのは、浅草で半世紀暖簾を守る職人だ。水加減ひとつでボロボロと崩れてしまう繊細な十割を打つには、長年の勘と高度な手延べの技術が欠かせない。太めに打たれた十割麺を手繰り、噛み締めれば、野性味あふれる香味が力強く主張する。
これに対し、すべすべとした美しさとツルリとした爽快感を誇るのが二八だ。しなやかな伸びがあり、濃いめのつゆにも負けない存在感を放つ。歴史的なドキュメンタリー番組『美しき日本 蕎麦紀行』(NHK総合)の最新特集でも、この対照的な二つの個性が取り上げられ、視聴者の間で大きな反響を呼んだ。どちらが優れているかではなく、求めている食感がどちらなのかという問いに帰着する。