通常、火災は酸素を遮断して二酸化炭素で覆えば窒息消火できます。しかし、マグネシウムの燃焼にこの常識は通用しません。二酸化炭素で満たした集気びんや、くり抜いたドライアイスの塊の中に火のついたマグネシウムを入れると、消えるどころか激しい光を放ちながら燃焼を続けます。
この驚くべき現象を引き起こす化学反応式は以下の通りです。
2Mg + CO₂ → 2MgO + C
なぜ酸素のない二酸化炭素中で燃焼が続くのかというと、マグネシウムの酸素に対する親和性(結びつく力)が炭素よりも圧倒的に強いためです。マグネシウムは二酸化炭素分子を強引に分解し、そこから酸素を奪い取って自身は酸化マグネシウムとなり、奪われた炭素は黒いすす(単体の炭素)として遊離します。
ドライアイスを用いたマグネシウム燃焼実験を行うと、反応終了後に白い酸化マグネシウムの粉末とともに、黒い炭素の粒がはっきりと確認できます。「二酸化炭素は不燃性ガスであり消火に使える」という固定観念を根底から覆す、極めて還元力の強い金属ならではの現象です。