ネット上の学習動画やまとめ記事では「パスカルの三角形さえ覚えれば二項定理の公式は不要」と主張されることがありますが、これは大きな誤解です。
パスカルの三角形は $n=3 \sim 5$ 程度までは素早く描けますが、$n=8$ や $n=10$ を超えると足し算の段数が増え、かえって計算ミスの温床になります。入試本番で描くべきなのはせいぜい5段目までであり、高次数の問題では ${}_n\mathrm{C}_r$ の直接計算および対称性(${}_n\mathrm{C}_r = {}_n\mathrm{C}_{n-r}$)を駆使する方が圧倒的に速く安全です。
また、多項定理において $\frac{n!}{p!q!r!}$ を使う際、分母の階乗同士の掛け算でパニックになる人がいますが、これも「まず $n$ 個から $p$ 個選び、残った中から $q$ 個選ぶ」という連続の $\mathrm{C}$ 計算(${}_n\mathrm{C}_p \times {}_{n-p}\mathrm{C}_q$)に置き換える方が暗算速度は上がります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
受験生の習熟度や志望校の出題形式によって、裏ワザの導入アプローチは明確に分けるべきです。
【積極的に導入すべき人】
- 共通テストの数学で時間が足りず、制限時間内に解き終わらない人
- 私立大学のマーク式試験・穴埋め形式を中心に受験する人
- 二項係数や組合せの基本的な定義($_n\mathrm{C}_r$ の意味)が既に頭に入っている人
【基礎の徹底を優先すべき人】
- 「なぜその式になるのか」の理由が分からず、数字の当てはめだけで解こうとしている人
- 負の符号や分数が混ざった途端に計算が止まってしまう人