私たちが日常会話で当たり前のように使い分けている「蛾」と「蝶」ですが、生物学的な分類体系(タクソノミー)では両者を明確に分ける独立したカテゴリーは存在しません。どちらも昆虫綱・有翅昆虫亜綱の「鱗翅目(りんしもく / チョウ目)」というひとつのグループに属しています。
鱗翅目の大きな特徴は、羽や体に「鱗粉(りんぷん)」と呼ばれる微細な粉状の鱗(うろこ)がびっしりと並んでいる点です。世界中には約16万種以上の鱗翅目が確認されていますが、そのうち蝶と呼ばれるグループは全体のわずか1割程度(約2万種)に過ぎず、残りの約9割(約14万種以上)はすべて蛾に分類されます。
系統樹の視点から見ると、「蛾という広大な樹海の中に、たまたま昼間に適応した一部の枝(蝶)が生えている」というのが学術的な正確な捉え方です。言語文化の違いを見ても、英語では「Butterfly」と「Moth」で明確に単語が分かれている一方、フランス語ではどちらも「Papillon(パピヨン / 昼のパピヨン・夜のパピヨン)」と呼び、ドイツ語でも蛾を「夜の蝶(Nachtfalter)」と表現するなど、言語圏によって捉え方すら異なっています。