「毛虫を見かけたら即座に殺虫剤を噴射する」という対応を取る家庭は多いですが、昆虫生態学の観点から見れば、日本に分布する蛾約6,000種・蝶約240種のうち、人に直接害を及ぼす毒毛を持つ昆虫は全体の1%未満に過ぎません。
地面を素早く横切る毛むくじゃらの「クマケムシ(ヒトリガ科の幼虫)」や、春先にサクラやナシの葉に大発生する「マイマイガ(ドクガ科)」の終齢幼虫などは、見た目のインパクトこそ凄まじいものの、人肌を刺す毒針毛は持っていません(※マイマイガはふ化直後の1齢幼虫のみ微弱な毒毛を持ちますが、成長とともに消失します)。
また、美しい蝶の幼虫たちも独自の防衛進化を遂げています。柑橘類に付くナミアゲハやカラスアゲハは、幼少期には「鳥のフン」に擬態して天敵の目を欺き、大きくなると鮮やかな緑色に変化して葉に溶け込みます。パンジーやビオラを好むツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)の幼虫は、赤と黒の警戒色とトゲで「毒があるように見せかける擬態(ベイツ型擬態)」を行っているだけで、素手で触っても全く無害です。