「予防接種を受けたのにインフルエンザに感染した」という体験談は、決して珍しい話ではありません。この現象が「インフルエンザワクチンは効果がない」という誤解を生む最大の原因になっています。しかし、免疫学的な観点から見ると、これには明確な理由が存在します。
まず理解しておくべきは、インフルエンザワクチンの発症予防効果確率は約30%〜60%とされている点です。麻疹(はしか)ワクチンのように「打てばほぼ100%かからない」タイプとは異なり、ウイルスの侵入そのものを完全にシャットアウトする「感染予防」のバリアは限定的です。
打ってもかかってしまう主な背景には、以下の3つの要因が絡み合っています。
第1に、流行株とワクチン株の微妙なズレです。毎年春先に世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所がその冬の流行株を予測して製造しますが、ウイルスが微小な変異を起こすと効果が減弱します。
第2に、抗体ができる前の感染です。接種直後はまだ体に防御力が備わっておらず、潜伏期間を経て発症するケースが多発します。
第3に、個人の免疫応答の差です。疲労や加齢、体調によって作られる抗体の量には個人差があります。このように、「ワクチンを打つ=絶対にかからない無敵状態」ではないという前提を知ることが、納得のいく健康管理の第一歩です。