この台詞の出自は、1997年に公開された伝説的劇場アニメ『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』である。社会現象を巻き起こしたテレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』のもう一つの結末を描いた本作において、NERV本部が戦略自衛隊と使徒の脅威に晒され、人類補完計画が発動する極限状態のクライマックスにそれは現れる。
言葉の主は、特技係のオペレーターである青葉シゲル。声優の名優・子安武人が吹き込んだその声は、英雄的な覚悟とも絶叫とも程遠い、乾いた諦めを帯びていた。人類が次々と自らの望む幻影(アンチATフィールド)に抱かれてLCLへと還元されていく中、同僚の日向マコトは葛城ミサトの幻影を見、伊吹マヤは敬愛する赤木リツコの手の温もりに触れて融解していった。
しかし、青葉シゲルだけは違った。彼が見たのは愛する誰かではなく、無数の裸体の綾波レイが押し寄せてくる異様な光景だった。コンソールの下に身を潜め、アサルトライフルを抱えながら震える彼が漏らした独白こそが、この一言である。劇中における彼の真意は「他者への執着や幻想を持たない人間の、純粋な絶望」に他ならなかった。